大峠

大峠

 山形県と福島県を結ぶ道路はいくつかありますが、その中でも独特の魅力を持っているのが大峠です。

 米沢市から車を走らせると、道路は次第に山深くなり、長い上り坂が続きます。やがて全長約4キロの大峠トンネルに入り、気がつけば福島県です。トンネルを抜けると今度は下り坂になり、次々と現れる短いトンネルを抜けながら山を下っていきます。やがて喜多方ラーメンで有名な喜多方市街に入り、その先には会津若松があります。

 私は会津にも事業所があるため、この道路を利用する機会が少なくありません。そして大峠を走っていると、かなりの確率である動物に出会います。

 お猿さんです。

 道路脇に座っていたり、親子で遊んでいたり、時には群れで現れたりします。こちらが車で近づいても慌てる様子はなく、じっと見つめていることもあります。まるで「また来たのですか」と言われているようで、何度見ても不思議な気持ちになります。

 しかし、大峠の本当の迫力を感じるのは冬です。

 雪が降ると景色は一変します。特に山形県側の雪は圧倒的です。福島県側はトンネルが多いため、雪道を走る距離は比較的短いのですが、山形県側は見渡す限り銀世界です。道路の両側に高い雪の壁ができることも珍しくありません。

 特に福島県から山形県へ向かうときは緊張します。大峠トンネルを抜けた瞬間から雪の下り坂が始まるからです。慎重に運転していても、感覚としてはスキーで斜面を滑り降りているような気分になります。「どうか滑らないでくれ」と願いながらハンドルを握った経験のある方も多いのではないでしょうか。

 それでも、この道路は両県の人々にとって欠かせない生活道路です。

 会津地方には映画館がないため、新作映画を見るために米沢へ向かう人が少なくありません。休日になると、大峠を越えて映画館へ向かう家族連れや若者たちの姿があります。また、米沢で聞いた話では、仕事のために週五日、一年中この峠を越えて通勤している方もいるそうです。雪の日も吹雪の日も、この道を走り続けているのですから頭が下がります。

 考えてみると、大峠は単なる道路ではありません。山形県と福島県を結び、人と人、仕事と生活をつなぐ大切な架け橋です。かつては「酷道」としても有名だったこの道路ですが、大峠トンネルの完成によりかなり便利になりましたが、それでも冬はなかなか大変です。

 今では福島県と山形県を結ぶ道路といえば山形中央道を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし大峠には、高速道路にはない味わいがあります。四季折々の山の風景があり、野生動物との出会いがあり、そして冬には自然の厳しさを教えられます。

 もし皆さんが大峠を通る機会がありましたら、ぜひ周囲の景色にも目を向けてみてください。そして冬に通行するときは、十分な装備と慎重な運転を忘れないようにしてください。

 もしかすると道路脇で、お猿さんたちが皆さんを見送ってくれるかもしれません。