玉子酒

玉子酒

 皆さんは「玉子酒」というものをご存じでしょうか。

 私の住む福島県須賀川市では、昔から風邪を引いたときには「玉子酒を飲んで寝る」という風習がありました。作り方はいたって簡単です。日本酒を温め、そこに生卵を入れてかき混ぜ、さらに温めて白く濁ったところを飲むのです。家庭によっては砂糖を加えて甘くすることもあります。

 私が子供の頃は、風邪を引いたからといって、すぐに病院に行くようなことはあまりありませんでした。多少の熱や咳であれば、まずは家で暖かくして寝ている。そんな時に登場するのが玉子酒でした。

 温かい玉子酒を飲み、布団をかぶって一晩ぐっすり眠る。翌朝にはすっかり元気になっている。昔の人たちは、そんなことを信じていたようです。もっとも、玉子酒に風邪を治す医学的な効果が証明されているわけではありませんし、アルコールが入っていますので、子供や妊婦さん、薬を服用している方などには勧められません。あくまでも昔ながらの民間療法ということなのでしょう。

 ところで、この玉子酒についてインターネットで調べてみたところ、どうやら福島県だけの風習ではなく、全国各地で飲まれていたようです。

 それでも私には、玉子酒と聞くと思い出す人物がいます。

 私の故郷、須賀川市が生んだ世界的な映画監督、円谷英二氏です。『ゴジラ』や『ウルトラマン』などで知られ、「特撮の神様」と呼ばれる円谷英二氏も、風邪を引くと、とにかく玉子酒を飲んでいたそうです。

 実は、私の実家と円谷英二氏の実家は、わずか20メートルほどしか離れていません。ほとんどお隣同士といってもよい距離です。

 そんなこともあって、円谷英二氏が玉子酒を愛飲していたという話を知ったときには、何だか懐かしい気持ちになりました。ひょっとすると、昔のこの界隈では、どこの家でも風邪を引いたら玉子酒、というのが当たり前だったのかもしれません。

 今では風邪薬も豊富になり、病院に行けばさまざまな治療を受けられる時代になりました。しかし、昔の人たちは身近にあるものを利用しながら、病気や寒さを乗り越えてきたのでしょう。玉子酒も、そんな暮らしの知恵の一つだったのだと思います。

 さて、今年の気候は少し変わっていました。

 全国的には厳しい暑さが続いた地域もあったようですが、私たちの住む福島県や山形県では、お盆を過ぎた頃から曇り空の日が多く、例年に比べて涼しく感じる日が長かったように思います。

 季節の変わり目は体調を崩しやすいものです。最近では風邪を引いている人も多く、インフルエンザの流行も気になるところです。これから本格的な冬を迎えれば、寒さは一段と厳しくなります。

 そんな時期になると、私はふと昔の玉子酒を思い出します。

 もちろん、今では風邪を引いたら十分な休養と水分補給を心がけ、症状によっては医療機関を受診することが大切です。それでも、玉子酒という言葉には、昔の家庭の温かさや、家族が病人をいたわる優しさが感じられるような気がするのです。

 ところで、ここで山形県の皆さんにお聞きしたいことがあります。

 山形でも、昔から風邪を引くと玉子酒を飲む習慣があったのでしょうか。

 山形県は日本酒のおいしい土地ですから、きっと玉子酒にもそれぞれの家庭の味があったのではないかと思います。

 皆さんのお宅では、玉子酒を飲んでいましたか?

 昔の思い出などがありましたら、ぜひ教えていただきたいものです。